2026年の選抜高校野球よりDH制の導入が決定して、プロ野球も2027年のシーズンからセ・リーグでのDH制の導入案が正式に採用された。
この導入にあたりファンからは賛否の声が上がっているが採用の理由などを徹底解説していこうと思う。
なぜ導入?公式が示す背景と狙い

投手保護・故障リスクの軽減
- 打席・走塁由来の負傷回避
投手が打席に立たないことで、死球・走塁接触・バント処理後の肉離れ等のリスクを抑制。結果的に先発の登板間隔や年間イニングを安定させやすくなります。 - 投球に専念→品質の維持
打撃練習や走塁練習の比重が下がり、投球準備とリカバリーに時間を振り分けられるため、球速・球質の維持やシーズン後半の失速防止が期待されます。 - 若手投手の“炎上学習”を減らす
交代・代打の駆け引きに縛られにくくなるため、ブルペン運用の柔軟性が増し、故障手前の兆候で早めに手当てできる環境が整います。
攻撃力アップとエンタメ性の向上
- 1〜9番まで“打てる打線”
投手の打席が**指名打者(打撃専任)**に置き換わることで、得点期待値が底上げ。長打・ビッグイニングの確率が高まり、試合の見どころが増えます。 - スター打者の“出場機会延命”
守備の負担が大きい主砲やベテラン、故障明けの主力をDHで起用することで、離脱を防ぎながら打撃で貢献させやすくなります。結果、看板打者の露出増→観客満足と興行価値の向上につながります。 - 戦術の多様化
「代打の切り札」一辺倒ではなく、ミート型/長打型/左右病対策などチームの色がより明確に。データ分析とセットで、相手先発との相性起用が増え、見どころが増加します。
パ・リーグ/国際基準との整合・競争力強化
育成ラインの一本化
二軍や独立リーグ、大学・社会人で一般化しているDH運用と整合し、打撃特化型・守備改善中の選手にも一軍での“実戦打席”を確保。ドラフト戦略や助っ人スカウトでも打撃専任の価値が明確になります。
リーグ間の条件差を是正
交流戦・日本シリーズで毎年議論になっていた「ホームとビジターでDH有無が変わる不公平感」を解消。競技条件がそろうことで純粋な戦力比較がしやすくなります。
国際大会(WBC等)への接続
代表戦ではDH運用が前提となる場面が多く、国内でDH慣れした編成・采配・役割分担は、国際舞台での即応力を高めます。
理由をさまざま並べてきましたが、近年定着している「肩は消耗品」という考えの流れの名では当然の流れだったのではないかと思われます。やはり投手の中には打撃が得意ではない選手も多くいる中で、そんな選手がプロのステージで打席に立つことがデッドボール、無料ワンアウト、走塁での疲労など大きな懸念点が多くありました。
打撃が得意だとしても、芯を外した際の手の痺れなど投球以外にも意識を持っていかれることで最大のパフォーマンスが発揮できないのではないでしょうか。
登録枠・交代・二刀流の扱い
ベンチ入り人数・外国人枠とDHの関係
- ベンチ入り人数:従来の一軍登録・ベンチ入り上限をそのまま活用(DH導入で別枠が増えるわけではない)。
- DH=打撃専任の一野手:守備につかず攻撃イニングの打席のみ担当。
- 外国人枠:枠数の合計は従来と同一。ただし、起用の自由度が拡大するため、守備難だが長打力のある助っ人を「DH専任」で運用しやすくなる。
- 代替指名打者の登録:スタメン公示で「DH(指名打者)」と「投手」を明示。
- 投手が打席に入らない前提のため、野手一人分の出場機会が増える=ベンチの代打要員の価値は相対的に低下。
チェックリスト
- ベンチにもう一人増えるわけではない
- DHは捕手や内野の“休養日運用”にも使える
- 助っ人や大砲を守備に就けずフル出場させやすい
代打・投手交代と“DH解除”が起きる条件
基本:一度設定したDHは、特定の操作で解除(無効)される。解除後は投手が自打席に入る可能性が発生。
| 事象 | どうなる? | よくある落とし穴 |
|---|---|---|
| DHが守備につく | DH解除。以降、その打順は守備者の通常打順扱い | 終盤の守備固めでうっかりDHを外すケース |
| 投手が打撃に入る(代打→残留含む) | DH解除。以後、投手が打席に回る | 継投で打順が巡る展開を見落とす |
| 二重交代(投手→野手位置、野手→投手) | 入れ替え方でDH維持も解除も起こり得る | ダブルスイッチ感覚でNPB式DHの整合を誤る |
| DHに代打→その代打が守備へ | 守備についた時点で解除 | 代打起用後の守備配置を先に想定する |
運用のコツ
中継ぎを多用するチームは、打順巡りの予測表をベンチでリアルタイム更新。
「守備に出す=解除」の原則をチーム全員で共有。
8~9回の守備固めでは、DH以外の野手で対応する設計に。
二刀流の扱い(投手兼DH/途中から野手起用)
ケースA:先発投手=自軍DHを兼ねる(投手兼DH)
- 先発が自身の打順をDHとして担う指定が可能(規定許容時)。
- 投手が降板しても、打者としては残留できる(逆に残さない選択も可)。
- 途中で守備位置(外野・一塁など)に就くと、DH解除の条件に接触するため注意。
ケースB:先発投手→降板後に野手起用
- 投手降板後、野手としてフィールドへ出す運用は可能だが、配置と入替順でDHの有無が変動。
- ベターな手順:
- 打者として残留(DH枠を維持)→
- 次の回頭で代替投手を投入し、二刀流選手は引き続き打者専任。
- 守備に就けるとDH解除になるため、意図がある時だけ行う。
ケースC:リリーフ登板中の打順対応
- DH下では、救援が打席に立つ事態は原則発生しない。
- ただし解除後は、継投のタイミングで投手打順が絡む。その場合は代打を切る前提でブルペンを温める。
賛成・反対の主張を整理
賛成派の主張:攻撃力・安全性・興行価値の向上
- 得点期待値の底上げ
投手打席→打撃専任へ置換で、長打・連打の確率が上昇。ビッグイニングや逆転劇が増え、視聴体験がリッチに。 - 投手保護とパフォーマンス維持
打席・走塁由来の故障リスクを削減。投手は投球準備と回復に専念でき、シーズン後半の失速や離脱を抑えやすい。 - スター露出の最大化
守備負担の大きい主砲やベテランをDHでフル起用しやすく、看板打者の出場機会を確保。スポンサー・放映の価値も上がる。 - 国際基準・パ・リーグとの整合
交流戦・日本シリーズの条件差縮小。代表戦(WBC等)に通じる運用を日常的に学べ、リーグ全体の競争力向上に寄与。 - 編成と育成の幅が広がる
守備に課題のある打撃特化型に道が開け、若手の一軍打席機会を確保しやすい。
反対派の主張:戦術の単調化・“セの色”喪失への懸念
“セらしさ”の希薄化
機動力・小技・緻密な采配で魅せる“セの文脈”が薄れ、リーグ間の同質化が進む。
用兵の妙味が薄れる
投手打席を起点にした代打・継投・ダブルスイッチなどの駆け引きが減り、小技・我慢比べの要素が弱まる。
“投手も打つ”伝統の消失
バント、スクイズ、意外な一発――投手打席のドラマがなくなる寂しさ。歴史的比較(記録)も難しくなる。
打高の行き過ぎ
試合時間が長引く、三振—本塁打偏重の傾向が強まる懸念。守備・走塁の価値が相対的に下がるという見方。
選手層の固定化
DHが特定の大砲で固定されると、代打要員や控え野手の出場機会が減る可能性。ベンチの競争が鈍るとの指摘。
折衷案・運用上の打ち手:多様性と妙味を残す工夫
- 期間・大会別の最適化
オープン戦・二軍はDH可変運用で育成重視、本番は通年DHで負担軽減と公平性を確保。 - 球団カラーの明確化
打撃偏重に寄り過ぎないよう、機動力・守備特化の選手を併用。代走/守備固めの価値を高め、終盤の駆け引きを残す。 - 二刀流・可変DHの活用
コンディションや相手先発に応じて、主砲をDH⇄守備で切り替え。投手兼打者の特性を戦略的に使い分ける。 - データ連動の見せ方改革
TV/配信は得点期待値の変化・マッチアップ指標を可視化し、戦術の深みを**“見える化”**。ファンの理解と没入感を高める。 - 若手育成ルールの設計
一軍ベンチの育成枠/出場回数インセンティブで、控えの機会確保と競争活性化を両立。
交流戦・日本シリーズの公平性は改善される?
ホーム/ビジター格差の縮小効果
- 同一条件での対戦が増える
これまで交流戦・日本シリーズは、セ主催=DHなし/パ主催=DHありが基本。セ側は「投手の打席運用・代打の枚数」「守備に不安がある強打者の扱い」など、球場ごとに戦い方を切り替える負荷が大きかった。
セが通年DH化すれば、両リーグとも“普段通りの編成と用兵”で乗り込めるため、ホームアドバンテージの一部が薄まる。 - 選手育成の非対称も緩和
パはDH前提で「打撃特化型」を計画的に育て、交流戦で優位を取りやすかった。通年DHでセも同じ土俵に立てるため、交流戦の勝率差や短期決戦の適応差は縮小が見込まれる。
歴史比較(記録・タイトル)への影響と留意点
投手タイトルの読み替え
代打タイミングの制約が緩むため、先発のイニング配分・救援の登板局面が変化。防御率・勝敗の文脈も“DH環境”を踏まえて読む必要がある。
攻撃環境の変化に伴う“基準値の上振れ”
投手打席消失→打席の質が上がるため、リーグ平均得点・OPS・本塁打は上がりやすい。過去の“非DH時代”との素の数字比較はミスリードになり得る。
評価は“時代補正”と相対指標で
単年や通算のタイトル評価では、wRC+・OPS+(リーグ平均比)などの相対値や、park factor(球場補正)も併用すると公正。
規約統一による運営メリット(審判・編成・視聴体験)
- 審判・記録運用の簡素化
DH/非DHの切替やDH解除時の複雑なケースがシリーズごとに変わる負担が減り、オペレーションの統一でトラブルが減少。 - 編成・興行の一貫性
球団は年間を通して同一哲学(DH前提)でロスター設計が可能。短期決戦用の“別仕様”を準備するコストが下がり、選手の役割も明確化。 - 視聴体験の標準化
視聴者にとっても、ルールが毎試合変わらないことは理解コストを下げ、データ比較・議論がしやすくなる。ハイライト制作も長打や勝負打席中心で統一しやすい。
まとめ
これまでさまざまな理由やメリット・デメリットを挙げてきましたが、昔からのセ・リーグファンは投手が打席に立つ時の代打の駆け引きやたまに打つ投手のヒットなどが醍醐味と考える人も少なくないと思います。昔ながらの体制を変えるのは大きな不安と反発があるとは思いますが、選手のプロ野球人生や故障のリスク、打者の出場機会が増えるなどのメリットを考えたときに導入は時代の流れとともに仕方のないことなのかと思います。プロ野球で投手の打席での姿は今年と来年の2026年のシーズンが最後になるのでしっかり目に焼き付けたいと思います。


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